baseballlll’s blog~カープとMLB。

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見逃し三振は悪か?

見逃し三振、それは絶対的な悪なのか・・・?

 

見逃し三振。野球をしたことがある人なら誰しも経験があるでしょう。私も昔はいわゆる高校球児でしたので、試合で見逃し三振をしたこともあります。

 

中でも思い出深いのは、プロ注目の最速145キロ超を投げる投手と対戦したときのこと。このくらいの球速を持つレベルになると、いわゆる強豪校レベルでないところではストレート一本で抑えられてしまいます。ゾーンの中で球を散らされるともう当てるだけでも精一杯。その投手との試合にスタメン出場した私は、打席に立って更にビックリ。なんと球が見えません!(笑)

前日にマシン打撃での練習で145キロを打って多少の自信をつけたつもりで臨んだはずが、やはり生身の投手が放る生きた球は全く違います。そもそもマシン打撃では、ほぼド真ん中に放り込まれる球を『イチ、ニノ、サン!』で振って打っていただけですから、ほとんど意味を成さない練習となっていたことに恥ずかしながら打席に立って初めて気が付きました。

仕方がないのでバットを短く持って臨んでみたものの、何しろ球が見えないので振れどもサッパリ当たりません。第1打席はなす術もなく空振り三振。

 

全く自信のないまま迎えた第2打席も、こんな調子ですから当然バットにボールが当たりません。あっという間に追い込まれてしまいました。よしそれならばと開き直った私はバットを長く持ち替え、出来るだけ当たる範囲を広くして『イチ、ニノ、サン!』でフルスイングしてみようと決心してやってみたところ、ボコッという音と共に奇跡的にミートに成功!どん詰まりでしたが、フルスイングしたおかげでセンター前にポトリ。何とこれがタイムリーヒットになりました。

 

これはイケるな!と自信をつけて臨んだ第3打席。だんだんと目も慣れてきて、ストライクかボールかくらいはなんとか判別できるようになっていました。例の『イチ、ニノ、サン!』でタイミングを合わせますが、なかなか前には飛びません。追い込まれてカウントは3-2。四球は出したくないはずだから、真ん中に来る!と読んだラストボール!リリースされたボールは外れた!と、思ったら・・・なんとなんとこの球が、それまで一球も投げてこなかったスライダー!完全に意表を突かれた私は、タイミングがズレた膝と腰がカックンと落ちていくのを感じながら、目の前ど真ん中を通過していくボールを半開きの口の間抜け顔で見送るほかありませんでした・・・。


当時、チーム内では見逃し三振は御法度でした。その回のラストバッターとなった私は、急いでベンチに戻り守備の支度をしてその場を離れることに必死でしたが、そのわずかの間に監督からの怒声と先輩からの罵声、キャプテンからの叱責を一度に受けねばなりませんでした。幸い試合中だったので、殴られずに済んだのは良かったと言わねばならないでしょう。


・・・と、いう具合に見逃し三振は簡単に批判の的となります。特に高校野球などにおいては、『高校野球らしさ』というよく分からないものの対極に位置する象徴的なもののひとつが見逃し三振だと思います。

観る側も現場も無意識に選手に要求している、やる気というか向かっていく姿勢というか溌剌さというか・・・見逃し三振はその見映えから、そういったものの反対で漠然とした無気力さを感じさせるのも否定出来ません。見逃し三振をした選手に浴びせる言葉の定番と言えば『せめて振れよ!打つ気あるのか!』ですからね。(笑)

また、日本の野球ではスモールベースボールを自己犠牲の精神と結びつけ、それを賞賛する考え方が割と一般的(野球好きには少ないかも知れませんが)であることからも、やはり見逃し三振は凡退の内容として受け入れられにくいものであるように思います。

 

 

さて長い前置きになりましたが、思い出話を書きたいわけではありません。こんな記事がありました。

 

原監督は丸を叱責したが… なぜ強打者に見逃し三振が多いのか(NEWSポストセブン)


要約すると、現代の野球においては見逃し三振もそんなに批判されるべきことじゃない、見逃し三振するのには、追い込まれても好球必打の意識があり、特に一般的に強打者と言われる選手ほど今そういう打席での取り組みをしているんだ、という感じでしょうか。


記事によると、昨シーズン両リーグの見逃し三振の数は、


1位 広島・鈴木誠也選手

2位 巨人・岡本選手

3位 広島田中選手

4位 DeNA・筒香選手

5位 ヤクルト・山田選手


となっており、田中選手を除くと全員が長打率.500超え、ホームラン30本超えのスラッガーです。また全員が100以上の三振を記録しているのも特徴です。


我らがカープの不動の四番・鈴木誠也選手は昨シーズン、リーグトップの42個の見逃し三振を記録しています。今シーズンの数字は分かりませんが、恐らく今もリーグトップレベルに多いのではないかと思います。よく見ますからね。

鈴木誠也選手は本人がヒットの延長をホームランとするのが理想と語っているように、スラッガーでありながら打率も高く、しっかりとボールをミートする技術にも長けている印象です。

それでも見逃し三振が多いのは何故か。

それは記事中にもあるとおり、球種を読んだ上で追い込まれても三振覚悟で狙い球を絞っているからでしょう。そしてその結果が、昨シーズンの成績や今シーズンここまでの成績に表れているわけです。ただし見逃し三振を許容しないアプローチを取った場合にどんな成績を残すのかは分かりませんから、そこは良し悪しを判断しかねます。

 

個人的には、四番のような主軸(というより長打を期待できる打者)なら、球を追いかけ回しての空振り三振よりも、狙いが外れての見逃し三振の方が見ていて納得が行きます。じっと狙い球の球種やコースが来るのを待っているわけですが、相手バッテリーからすると一発長打が怖いので、こういうタイプに対しては甘く行けないからコーナーを突きたい、しかもそのコーナーを突く時にも普段よりボールゾーン側を意識した投球になるのが人間心理というもののような気がします。結果、四球による出塁も増えるという効果もあります。

ただし、内野前進守備時などのヒットコースが広くある場合においては所謂『当てに行く』ことのほうが良い場合もあると思いますので、この辺りはケースバイケース、といったところでしょうか。

 

反対に、パワーや選球眼に欠けるが、脚力のある選手などは見逃し三振をしないようなアプローチが必要だと思います。四球でもOKとされがちな強打者と違い、塁に出られる方が厄介なので基本的にストライクゾーンで勝負してくるはずですし、当てるだけのスイングでもその脚で相手守備にプレッシャーをかけてエラーを誘うことも出来るでしょう。とは言え、明らかなボール球は振らずにカウントを有利に持ち込む方が良いのは当然ですが。


あと勝手な偏見ですが、見逃し三振はある程度そのチームでの立場を確立している打者でないと出来ないですよね。良い悪いは置いておいても、見逃し三振は冒頭に書いたとおり、単純に見映えが悪いです。ルーキーがオープン戦で、あるいは一軍に上がってきたばかりの若手が公式戦で、狙い球が来なかったからと言って見逃し三振を何度もやってしまったらベンチからもファンからも非難轟々間違いなしです。三打席連続でフルスイングの空振り三振なら、『まだまだ若いな!がんばれ!!』と言われそうですが、三打席連続見逃し三振などしようものなら・・・。

つまり逆の着想で、一流の強打者であるからこそ見逃し三振も許される、という説はどうでしょう?(笑)

 


つまるところ、その打者ごとの能力や特徴によって、打席でのアプローチの仕方が違うということですね。

いくらフライボールレボリューションだと言ったところで、スタンドに叩き込むパワーが無ければただのポップフライ製造機ですし、どれだけコンタクトスキルが高くて三振をしなくても、それがヒットや出塁につながらなければ野球では評価されません。

記事では丸選手の見逃し三振に対して原監督が苦言を呈していることが取り上げられていますが、丸選手最大の強みである出塁能力と、それに次ぐ魅力である長打力はいずれも見逃し三振や空振り三振とは通常、裏表の関係です。これを無関係に出来たら、多分打率が5割くらいの打者が誕生します。(笑)

 

昨シーズン、丸選手はリーグトップの130三振を喫しましたが、安打や四球などを合わせた出塁の数は273。そしてNPBトップの見逃し三振42(116三振のうち)を記録した鈴木誠也選手の出塁数は248。

かたや、リーグ最少の45三振だったDeNA・宮﨑選手の出塁の数は217。48三振だったヤクルト・青木選手の出塁数は233。これらを見ると、三振が多いことを直ちに責めることは出来ないと思うのです。(※三振しなければ進塁打を打てたかもしれませんが、三振したからこそ併殺は避けられたかもしれないので、この辺は置いておきます。)そして見逃し三振は打席でのアプローチの結果であり、これら出塁数や出塁率、長打率もこのアプローチの結果です。丸選手や鈴木誠也選手はこのアプローチだからこそこの成績を出せるのであり、宮﨑選手や青木選手もまた同様です。

私なりの結論は、見逃し三振もヒットやホームラン、出塁へのプロセスの一部だと思える選手であれば、全く問題ありません。そもそも誰だって見逃し三振はしたくありません。が、全打席ヒットを打つことはほぼ不可能です。選手にはそれぞれ打席での戦略があり、狙い球のみを叩くのか、狙いを定めず色々と手を出してみるのか、自身が最高のパフォーマンスを発揮できると思われるそれぞれのやり方で取り組んでいるはずです。そのやり方が当たっているかどうかは、ある程度の期間の成績を見てみないと分かりません。

丸選手は長い間このスタイルで一流の成績を残しているのですから、それを批判するというのは、取り組み方を変えて更に上の段階に挑戦してみろという事なのでしょうか。これから丸選手がどのような打席での戦略を採り、そして成績がどう変わるか、或いは変わらないのか、注目していきたいと思います。

 

 

あ、少年野球とか高校野球で見逃し三振したからってむやみに怒鳴りつけるのは本当にダメだと思いますよ!(笑)

 

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