8回から9回にかけての攻防は、なんとも人間臭いシーンの目白押しでした。
今日は宇都宮でのゲーム。先発の遠藤投手、ご両親が観戦に訪れていたようです。
いいところを見せるぞ、と意気込んだのは間違いありません。序盤からほとんど付け入る隙のない素晴らしいピッチングを見せてくれました。
微妙な変化が見えたのは終盤8回。
カープにとっては今シーズン呪われていると言えるこのイニング、球数的にも、内容的にも遠藤投手が続投することは衆目一致するところでした。
結果は無失点でしたが、ピンチを招き制球にバラつきが見られ始めます。
そして直後の9回表の攻撃、1アウト満塁で追加点の大チャンスを作ります。
ここで打順は9番、遠藤投手・・・通常であれば迷わず代打でしょう。
しかし、佐々岡監督の親心が出たか。
このまま何事もなく試合を締めくくることができれば、両親の前でプロ初完封を成し遂げることができるという人生でもう二度とないであろう機会。普段伝え聞く佐々岡監督の人となりから推測すれば、遠藤投手を9回も投げさせるであろうということは充分に考えられました。
結果から論じれば、ここで最悪のゲッツーを喫してしまったことで、いやそもそも代打を出さなかったところから、カープの悪夢は既に始まっていたと言えます。
最終回、残るアウトはあと”たったの”3つ。
大丈夫かな?というカープファンの不安が渦巻き始める中、先頭のウォーカー選手に対する初球に、磯村選手は内角の真っ直ぐを要求しました。
”あと少しだ。もう一度、気合いを入れ直せ!”
そんな言葉が聞こえてくるような配球に遠藤投手もその1球だけは応えることができましたが、その後は明らかにへばっていました。1球1球が運を天に任せた、という感じ。
もしもそれで良い結果に転んでいれば、『野球の神様が・・・』なんて運命めいたコメントを残して、見ているファンも、ああ良かったね、で終わっていたのでしょうね。
しかし現実はプロの勝負をしているのです。敵も味方も、誰一人としてそんな美しい筋書きに忖度する者はいません。ただ全力に勝利に向かってプレーするのみです。
その結果が、はいこの通りでした、というだけのことです。
今日の交代策は攻守どちらも、冷静に見れば全く理屈が通りません。
追加点を取り、残りのアウト3つを取る、これを甘く見積もっていたために負けるべくして負けた。
でもそこには、関わる選手、首脳陣の様々な思惑や希望がありました。
甘いから負けたんだ、と文句をつけたくもあり、仕方がないよ、人のすることだからそういう情もあるよね、と理解したくもあり。
二兎を追い、一兎も得られなかった今日。
美しいシナリオを根拠なく描き、運を天に任せる部分を増大させて野球の神様に祈っても、幸運はそう簡単に転がり込んでは来ません。
今日のことは、遠藤投手はもちろん、佐々岡監督やコーチ陣にとっても胸が痛く、忘れられないはずです。
だからこそ、こういう敗戦は実りあるものにしてほしいと、強く願っています。
この1敗が次の1勝、次の10勝を生み出した、と言えるように。
もしも自分が遠藤投手の親だったとしたら、どう思うかな・・・いや、そんなことを書くのは野暮ってもんですね。